真空技術ガイド

Technical Guide

JISフランジとは

 日本工業規格(Japanese Industrial Standards)「JIS B 2290真空フランジ」で定められた規格のフランジです。ゴム製Oリングによるシール方式で繰り返し使用することができ、高真空領域までの真空容器や継手配管に広く採用されています。Oリング用の溝が作られた溝付き(VG)タイプと、対になる溝なし(VF)タイプの2種類があり、さらにそれぞれに固定フランジと回転フランジのバリエーションがあります。回転フランジはボルト締結前であれば自由に回転できるため、ボルト穴の位置調整が必要な箇所に適しています。ベーキングを行う場合は、使用するOリングの材質に依存しますがMax150℃程度まで耐えることができます。

表.1 VF/VG 固定型フランジ寸法表

表.2 VF/VG 回転型フランジ寸法表


図.1 JIS固定フランジと回転フランジ

 規格品として販売されているJISフランジは締結用のボルト穴が貫通穴ですが、タップ穴で製作することも可能です。

取り扱い上の注意

  • Oリング溝やシール面を傷つけないように、未使用時にはキャップなどで保護してください。
  • 長期間使用したOリングには変形や変質がみられる場合があります。そのような場合は新品と交換してください。
  • 締結に使用するボルトには、潤滑・焼付防止剤を塗布することでベーキング後のかじりを防止できます。
  • わずかなゴミが真空リークの原因となるため、使用前にはOリング、フランジシール面をエタノールなどで拭いてください。その際、円周方向に手を放さずにぐるっと一周拭うのがポイントです。可能な限り素手では取り扱わず、ゴム手袋などを着用の上で作業することを推奨します。

使用Oリングについて

  • 真空用JISフランジにはV番と呼ばれる規格のOリングを使用します。(表.3参照)
  • 必要に応じて、真空グリス(揮発性の低いシリコングリスやフッ素配合グリス)をOリング表面に薄く塗布してください。安定したシール性能を発揮することができます。

表.3 適用Oリング一覧

フランジの締め方

  1. Oリング溝とシール面にゴミや傷がないか確認します。
    放射方向に繊維状のゴミや深い傷が入っていると、真空リークのリスクが高くなります。
  2. Oリング表面とシール面をエタノールなどで拭いて脱脂とゴミの除去を行います。
  3. Oリングを溝に嵌めたらボルト穴位置を合わせてフランジを重ね合わせ、
    ボルトとナットで挟み込んで手締めで軽く締め付けます。
  4. 工具を使用して対角締めを行います。
  5. 最後に1周して緩みが無いことを確認します。

図.2 対角締め参考図
表.4 対応ボルトと締め付けトルク