真空技術ガイド

Technical Guide

エラストマーの基礎

エラストマーについて

エラストマーとは?

常温でゴムのような弾性を持つ高分子材料です。

耐摩耗性や柔軟性に優れており、シール材や衝撃吸収材として広く使用されています。

真空装置では、真空シール用のOリングとして最もよくに使用されます。

エラストマーの特徴

  • 弾性が高い
  • 加工しやすい
  • 金属や樹脂に比べて強度、剛性が高い
  • 温度によって性能が大きく変化する
  • 経年劣化が起こる
  • 気体放出速度が大きい
  • 気体透過度が高い

用途・使われる部品例

  • シール材(Oリングなど)
  • 衝撃吸収材

材料の種類

フッ素ゴム

フッ化ビニリデンゴム(FKM、バイトン®)

 バイトンの名で広く知られるFKMは、耐熱性・耐油性・耐薬品性・溶剤性に優れ、加工性も良好な材料です。NBRなどの汎用ゴムと比べて価格は高めですが、その優れた性能から真空装置で広く使用されています。フッ素ゴムの中でも代表的な素材であり、耐熱温度は約-15℃~約200℃です。

パーフルオロエラストマー(パーフロ、FFKM、カルレッツ®

 テフロンのように完全にフッ素化された重合体であり、耐薬品性および耐熱性に優れた樹脂です。FKMよりも高い耐熱性と耐薬品性を持ちます。耐熱温度は約0℃~約320℃です。

ニトリルブタジエンゴム(NBR、アクリロニトルブタジエンゴム、ブナN)

 ブタジエンとアクリロニトリルの共重合体で構成されるゴムで、耐油性に優れています。NBRはシール材としてのゴム製品において、一般的な汎用材料として広く使用されています。耐熱温度は約-50℃~約80℃です。

クロロプレンゴム(CR、ネオプレン)

 耐候性、耐油性、難燃性、耐摩耗性を備えた、非常にバランスの取れたゴムです。各特性においては他のゴムに劣る場合もありますが、総合性能に優れています。ただし、低温下では結晶化しやすいため、低温環境での使用には適していません。耐熱温度は約-40℃~約70℃です。

シリコーンゴム(ビニルメチルシリコーンゴム、VMQ)

 耐熱性、耐水性、耐薬品性、耐候性、耐オゾン性、耐寒性に優れ、食品、薬品、医療品などの部品に使用されます。力学的性質は劣るため、運動用のシール材には適さず、主に固定用シール材として用いられます。シリコーンゴムには液体状やペースト状のタイプもあり、シーラントや接着剤、型取り材としても利用されます。耐熱温度は約-50℃~約180℃です。

エチレンプロピレンゴム(EPDM)

 ポリエチレンとプロピレンを共重合したエチレンプロピレンゴム(EPM)にジエンを加えたゴムで、耐候性や耐オゾン性に優れ、材料コストを抑えやすいという利点があります。加硫方法には硫黄加硫と過酸化物加硫(パーオキサイド加硫)の2種類があり、耐熱性は、硫黄加硫では約-40℃~約70℃、過酸化物加硫では約-40℃~約150℃です。一方で耐油性は低く、有機溶剤により膨張や劣化を引き起こすため、使用には注意が必要です。

 

表1 各種エラストマーの耐性一覧(あくまでも参考値です。メーカーやグレードによって多少異なります。)

FKM FFKM NBR CR VMQ EPDM
耐熱性 ○200℃ ◎320℃ △80℃ △70℃ ○180℃ ○150℃
耐油性(鉱物油) ×
耐薬品性
耐摩耗性
対候性 ×
耐寒性 △-15℃ ×0℃ △-20℃ ○-40℃ ◎-50℃ ○-40℃

他の材料との比較(選定ポイント)

比較対象:金属材料

シール材として使用する場合、金属より安価で複数回反復仕様ができるが、耐熱性や耐久性は劣る