Technical Guide
炭素鋼(鉄)について
炭素鋼とは?
炭素含有量が0.02~0.1%と低い鉄で、加工性や強度が優れており価格も安価です。
耐食性は低いですが、板金、鋳造品、機械構造部品などとして広く使われています。
また、磁気特性が優れていることから磁性材料としても利用されており、電磁石やトランスのコア材にも用いられます。
真空装置では装置内部では使用せず、外部の強度が必要な箇所に使われる材料です。
炭素鋼の特徴
- 機械的強度が高い
- ステンレス鋼やアルミニウム合金に比べ、安価
- 溶接しやすい
- 錆びやすいので表面処理が必須
- 気体放出量が大きい
用途・使われる部品例
- 架台
- サポート部品
- 外装プレートなど
- 気体放出量が多いため、真空環境内では使用しない
材質の種類
図4 鉄鋼材の区分
SS400
熱間圧延によって製造され、表面が黒皮と呼ばれる酸化皮膜に覆われたものと、黒皮を除去したミガキ材などがあります。真空装置では主に焼付塗装を施し、架台などの構造部材に使用されます。SSはStructural Steelの略で、400は引っ張り強さが約400MPaであることから、その名前が付けられました。
SPHC
熱間圧延軟鋼板のことを指し、板厚の標準範囲は1.2~14㎜です。厚みが必要な箇所で使用されます。
SPCC
冷間圧延鋼板のことを指し、板厚の標準範囲は3.2㎜以下です。SPHCに比べて価格は高いものの、寸法精度や外観に優れます。薄板の板金材料として使用されます。
S45C
機械構造用炭素鋼(SC材)に分類される中炭素鋼です。SS400と並んで広く使用されます。熱処理により硬さや耐摩耗性を調整できるため、機械部品や歯車など耐久性が求められる部品に多く使用されます。
SUJ2
高炭素クロム軸受鋼の代表的な材料であり、高炭素鋼にCrを添加して強化した軸受け用の特殊鋼です。高い硬度と優れた耐摩耗性、圧縮強度、および耐疲労性を合わせ持ち、ベアリングやボール、シャフト、などの摩耗や負荷が大きい機械部品に使用されます。
他の材料との比較(選定ポイント)
ステンレス鋼やアルミニウム合金に比べて耐食性が劣りますが、安価で強度があります。
仕上・表面処理
焼付塗装
塗装した素材を熱風式乾燥炉などで100度以上の高温に加熱し、塗膜を急速に硬化・乾燥させる塗装方法の総称です。塗料が加熱されることで化学的な硬化反応が起こり、塗膜が非常に強固で耐久性の高いものになります。
四三酸化鉄皮膜
鉄鋼表面に四三酸化鉄(Fe3O4)の黒錆を生じさせ、鉄鋼内部を保護する処理です。
無電解ニッケルメッキ
電気を使用せず、対象物をメッキ液に浸し、液中での化学反応を利用して金属表面にニッケル皮膜を形成する表面処理方法です。
低温黒色クロムメッキ
セラミックやテフロンなどから成る皮膜を形成させ、防錆や耐食性を向上させる表面処理方法です。
硬質クロムメッキ
Crを電気めっきによって厚く、硬く付着させる表面処理です。耐摩耗性や耐腐食性をつけるために行われ、機械部品の摺動面や金型、シリンダーなどに広く使用されます。
三価クロメート
金属表面に防食効果を持つ皮膜を形成する表面処理の一種で、六価クロムを含まない溶液に金属を浸して化学反応を起こす方法です。以前はより厚い皮膜を形成できる六価クロメートも行われていましたが、六価クロムの有害性から規制が進みました。現在では、環境負荷を低減するために三価クロムを使用した「三価クロメート化成処理」や「クロメートフリー処理」へと移行が進んでいます。