真空技術ガイド

Technical Guide

アルミニウム合金の基礎

アルミニウム合金について

アルミニウム合金とは?

アルミニウムに他の金属元素を加えて強度や耐食性、加工性などの性能を高めた材料です。

ステンレス鋼等に比べ、単位体積あたりの質量が小さいのが特徴です。

気体放出量が少なく、加工性にも優れているため、真空装置でも広く使用される材料です。

アルミニウム合金の特徴

  • 軽い
  • 空気中では腐食しにくく長寿命
  • 熱伝導率/電気伝導率が比較的高い
  • 非磁性
  • 鉄やステンレス鋼と比べると機械的強度が弱い
  • 溶接しにくい
  • 真空中でもガス放出が少ない
  • 超高真空環境では使用しない

用途・使われる部品例

  • 真空チャンバー本体
  • ホルダー類、治具
  • 光学系部品
  • バルブ
  • クランプなど

 

材質の種類

A1050

 1000番台は純アルミニウムであり、純度が99.00%以上の物が分類されています。数字部分の下2桁が純度の小数点以下2桁を表します。(例:A1050=純度99.50%)A1050は加工性と耐食性に優れていますが、純アルミは強度が低いため構造材には適していません。ちなみに、1円玉は純度100%のアルミニウムが使用されています。

A5052

 5000番台のアルミニウム合金は耐食性や溶接性に優れ、広く使用されています。5000番台の中でも最も代表的な材料です。切削性も良好でバランスの取れた材質であり、板材としての流通量が多いです。熱処理をしても強度が向上する材料ではありません。

A5056

 A5052に性質が似ていますが、A5052より高い強度を持つアルミニウム合金です。丸棒の形状での流通量が多く、機械構造部品や精密部品など、強度と加工性が求められる部品に用いられます。

A6061

 T6処理という熱処理施すことで、ジュラルミン(A2017)に次ぐ強度を持つようになります。ジュラルミンよりも耐食性に優れているため、強度と耐食性の両方が求められる用途に適しています。

A6063

 押し出し性に優れているため、管材としてよく使用されます。アルマイト処理を行うと、均一で密着性の高い皮膜が形成されやすく、A5052と比べて仕上がりが非常に良好です。

A2017(ジュラルミン)

 銅(Cu)とマグネシウム(Mg)を添加した高強度のアルミニウム合金で、ジュラルミンとして知られる材料です。熱処理(T4、T5、T6処理)によって大幅に強度が向上します。軽量でありながら高い強度を持つため、精密機械や航空宇宙分野、自動車部品などに使用されています。加工性に優れる一方、溶接性は劣るという欠点もあり、溶接よりは機械的な接合方法を用いた方が良いとされます。添加されている銅の影響で耐食性が劣る点にも注意が必要です。

A2024(超ジュラルミン)

 ジュラルミンより銅(Cu)とマグネシウム(Mg)の含有量を多くすることでさらに強度を高めたアルミニウム合金で、超ジュラルミンと呼ばれます。熱処理によって強度が向上する点はジュラルミンと同様です。

A7075(超々ジュラルミン)

 アルミニウム合金の中では、最も強度の高い材料であり、一般的に超々ジュラルミンと呼ばれます。
強度に優れるため、航空・宇宙系の部品などに用いられますが、溶接性や耐食性が悪い、高価であるといった欠点もあります。強度が必要な箇所にのみ絞って使用されることが多いです。

図3 各アルミの強度

他の材料との比較(選定ポイント)

鉄やステンレス鋼に比べて比重が約1/3と軽く、熱伝導性や電気伝導性に優れる。
銅に対しては熱伝導性や電気伝導性は劣るが、価格と重量のバランスが良い。

仕上げ・表面処理

バフ研磨、電解研磨、アルマイト処理

アルマイト処理

 アルマイト(陽極酸化処理)は、アルミニウムの表面に人工的に酸化皮膜を形成する表面処理です。アルミニウムは自然に酸化被膜が生成されるため、そのままでも耐食性を持ちますが、機械的損傷や化学的影響で皮膜が損なわれると、腐食が進行します。そこで、人工的に酸化被膜を厚くして耐食性や耐摩耗性を向上させるためにアルマイト処理が行われます。
処理後のアルミニウム表面には微細な孔が開いており、そこに染料を浸透させて着色させる、カラーアルマイトという処理方法もあります。

T6処理

 熱処理の一種で、アルミニウム合金の強度を向上させるために用いられ、溶体化処理と時効処理を行います。溶体化処理では、500度を超える高温で加熱し、アルミニウム中に含まれる元素を均一に溶け込ませます。続く時効処理では、液体化処理後に急冷した材料を一定の温度帯で数時間保持し、過剰に溶け込んだマグネシウム(Mg)、銅(Cu)、ケイ素(Si)などの元素を析出させることで強度が向上します。

洗浄方法

精密洗浄、脱脂洗浄