真空技術ガイド

Technical Guide

ICFフランジとは

 国際標準化機構(International Organization for Standardization)「ISO 3669-2」で定められた規格のフランジです。フランジのシール面に作られたナイフエッジと呼ばれる突起で無酸素銅製のガスケットを挟み込む形のシール方式で、超高真空や極高真空まで使用することができます。また、真空シール部が全て金属製であるため、高温でのベーキングも可能です。固定フランジ(F)/回転フランジ(R)の2種類があるほか、ボルト穴が貫通穴(H)とタップ穴(T)のものがそれぞれ標準的に製作されています。名称は、このフランジを開発したVarian社の商品名「ConFlat」が一般名称化したもので、日本国内ではキヤノンアネルバ社(当時の日電バリアン社)の商品名「ICF」の呼び名が良く使われています。(別名:CF、ベーカブルフランジ)

表1. FH(FT) 固定型フランジ寸法表

表2. RH回転型フランジ寸法表


図1. 固定フランジと回転フランジ

取り扱い上の注意

  • シール面(ナイフエッジ部周辺)を傷つけないように、未使用時にはキャップなどで保護してください。
  • 締結に使用するボルトには、潤滑・焼付防止剤を塗布することでベーキング後のかじりを防止できます。
  • わずかなゴミが真空リークの原因となるため、使用前にはナイフエッジ周辺をエタノールなどで拭いてください。その際、円周方向に手を放さずにぐるっと一周拭うのがポイントです。可能な限り素手では取り扱わず、ゴム手袋などを着用の上で作業することを推奨します。

ガスケットについて

種類と使い分け

ICFフランジ用のガスケットには、標準ガスケットとIPDガスケットの2種類があります。
通常使用するのは標準ガスケットですが、下記のような場合にはIPDガスケットを使用することがあります。

  • 繰り返し使用したい時
  • フランジのナイフエッジに傷がついてしまった場合
  • 内径を少しでも広く取りたい場合(標準ガスケットは内径方向に少しせり出しているため)

図2. ガスケットの種類(形状)

材質
  • 無酸素銅(標準)
  • 金/銀メッキ品(腐食ガス対応)
  • アルミ
  • ニッケル
  • フッ素ゴム(バイトン)
使用方法
  • ガスケットは真空パックで小分け梱包されています。使用直前に開封してください。
  • 標準ガスケットの繰り返し使用は推奨されていません。
    一度締め込んだガスケットを再使用するとリークの恐れがあるため、取り外した際には新しい物と交換することをお勧めします。
  • IPDガスケットは繰り返し使用することが可能です。ただし、1回取付け直すごとに1Nmずつ締め付けトルクを増やしていってください。
  • ICFフランジを頻繁に着脱する箇所がある場合は、フッ素ゴムガスケットの使用もご検討ください。高温でのベーキングは行えなくなりますが、繰り返し使用が可能です。
  • ICFフランジのエッジ寸法はメーカーによって僅かに異なります。メーカーの異なるICFフランジ同士を締結する場合は注意が必要です。

フランジの締め方

  1. シール面とガスケットにゴミや傷がないか確認します。放射方向に繊維状のゴミや深い傷が入っていると、真空リークのリスクが高くなります。
  2. ナイフエッジ周辺をエタノールなどで拭いて脱脂とゴミの除去を行います。
  3. ボルト穴位置を合わせてガスケットを間に挟み込みつつフランジを重ね合わせ、ボルトとナットで挟み込んで手締めで軽く締め付けます。
  4. 工具を使用して対角締めを複数回行います。この際、一度に最後まで締め込むことはせず、数回に分けてトルクを増していきます。
    (片締めとなりやすいため、フランジ同士が平行になっているか確認しつつ作業を行ってください。)
  5. 最後に1周して緩みが無いことを確認します。(規定トルクで締め込んだ後も、フランジ間には若干の隙間が残ります。)
表3. 対応ボルトと締め付けトルク


図4. フランジの締め方